現代錯誤 ~しかし君よ、否定語で入るな~

 こんばんは。精神まで猫背。現代錯誤のお時間です。

 2021/02/07にトビログの運営者ミーティングがありまして、そこで「人とのコミュニケーションで注意すべきこと」が少し話題に上がりました。特に盛り上がったのが「否定する言葉で入る返事をするのはよくない」ということでした。よく言われますよね。相手を不快にさせないため、そして議論をより深くさせるためにまずは相手への理解相槌から入るべきである、みたいな感じです。

 【A】しかしよく考えてみてください。それが本当に正しい事なのでしょうか。否定から入らないということは本心ではその意見に反対しているということを意味します。そのくせ、一度相手に理解を示す、つまりは自分の気持ちに嘘をついていわば虚偽の発言をする。これが果たして正しいことといえましょうか。

 【B】と、言われた今のあなたはきっと「いや、そんなことはない。否定から入らないことは重要である。」みたいなことを頭で考えているのではないでしょうか。人が返答で否定から入る場合、それはたいてい感情的になっている場合です。感情的にものを言われたらよほど冷静な人でない限りかっとなるか何らかの感情が沸いてくるか、いずれにせよ理性を失ってしまう場合がほとんどです。つまり、否定から入ることは否定の連鎖を生み出してしまうわけですね。いやーよくない。否定から入るべきじゃありませんね。これで納得されるんじゃないでしょうか。

 【C】しかしよく考えてみてください。それは果たして間違っていることなのでしょうか。理性を保ち落ち着いた議論をすることは一見正しい事のように思えます。しかしそのために自分の思いを犠牲にした嘘をつく必要まであるのでしょうか。もし僕が否定から入ったとして、相手が感情的になった場合、それは相手の理性が簡単に失われているに過ぎないのではないでしょうか。要するに、否定が否定の連鎖を生む場合、それは交渉相手が間違っているだけなのではないでしょうか。そもそも、「否定の連鎖」などと偉そうに言われましたが、常にこちら側が理性を保っていれば少なくともこちらに非はありませんよね。それなのに「否定をするな」の一点張りって、僕にはおかしいように思えてなりません。

 【D】いよいよ難しくなってきましたね。【C】で言及されていることは理解できる点も多くあります。理性を失わなければいいというのはまさにその通りです。正論でしかありません。しかし、正論であればそれが正解かといえば、そうではありません。議論には必ずゴールがあります。一方が理性を保ち続けでも、もう一方の感情が爆発してしまえば、議論は崩壊してしまいます。そうではなく、相手を断たせるために嘘を犠牲として、お互いに理性的な議論、建設的な対話を心掛ける必要があるのです。

 さて、【A】【B】【C】【D】四つの返答があります。今読んでる方のほとんどは【D】の返答に納得されたのではないでしょうか。【A】【C】は否定から入っていて高圧的ですし、【B】は相手の意見を全く聞いていませんからね。

 「いやそんなことはない。私は【A,B,C】の意見に賛成だ。」なんて思っているそこのあなた、否定から入ってしまっていますよ。

 今週はこの辺で。ではまた。

貫通錯誤
カードゲームとボードゲーム(ゴールデンエッグラー,mtg,シャドバ,Blade Rondo,自作など)を嗜んでいます。カードゲーム、音楽、動画についてなどと、根強いファンを誇りたいショートエッセーの現代錯誤という連載を書いていきます。
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