化学アレルギーへの処方箋#8 分子を定義する

連載第8回です。

前回は周期表について取り扱いました。
気になる方は化学アレルギーへの処方箋#7 元素たちの共通点は?をご覧ください。
今回はよく聞く”分子”の重箱の隅をつつこうと思います。

始める前に、化学アレルギーへの処方箋#1 化学とは?で説明した、この連載におけるアンダーマーカーの使い方を確認しておきます。
青アンダーマーカーが引いてある部分は重要な内容です。ここだけでも理解していただけたらと思います。
赤アンダーマーカーが引いてある部分はプラスαの内容です。化学アレルギーの方は飛ばしてもらって大丈夫です。

では早速始めていきましょう。
第8回のテーマはこちらです。

分子を定義できる?

“分子”について扱っていきます。
頑張っていきましょう!


さて、”分子”という言葉は聞いたことがあると思います。
では分子とは何でしょうか。
分子とは性質の最小単位です。

全ての物質は構造の最小単位である原子が集まることで出来ています。
ですが、全ての物質の性質の元となってるのは”分子”です。
例えば水は水素原子と酸素原子によって出来ていますが、何かの状態を成す時の基準は分子です。
水素原子,酸素原子がバラバラになることはなく、あくまで分子単位で何かが起こります。

原子と原子の結合は大きく分けて以下の3種類があります。

  1. 金属結合
  2. イオン結合
  3. 共有結合

このうち、共有結合をしているものが分子です。
金属結合,イオン結合しているものは分子ではありません。
また例外として共有結合をしない分子も存在し、それは単原子分子と呼ばれるものです。
単原子分子は読んで字のごとく「1つの原子がそのまま分子単位になっている」ものです。
ヘリウムやネオンなどの”貴ガス”と呼ばれるものはこれにあたります。
(貴ガスについては前回の化学アレルギーへの処方箋#7 元素たちの共通点は?をご覧ください)

では何故一般に共有結合をしているものが分子、金属結合orイオン結合をしているものは分子ではないと言えるのでしょうか?
ここが分子の定義にあたります。
あまり意識することはありませんが、原子と原子が結合すれば絶対分子という訳ではないのです。
分子の定義は以下の通りです。

1個の独立の粒子として行動すると考えられる原子または原子の結合体である.

旺文社 化学事典

簡単に言い換えれば、何個あるか数えられます
例えば水分子は水素原子2つと酸素原子1つが集まって1つの分子を形成するため、水が一定量あればその中に水分子が幾つあるか数えられます。
当たり前ですね。
これは例外を考える方が便利です。
試しに塩化ナトリウムを考えましょう。食塩です。これらはイオン結合をします。
塩化ナトリウムは塩化物イオンとナトリウムイオンがずっと結合し続けています。
確かに塩化物イオン,ナトリウムイオンの数は数えられますが、塩化ナトリウムの数は数えられません。
なぜなら何が塩化ナトリウムの単位か分からないからです。
これが分子か否かの境目です。

金属結合,イオン結合は電荷によって結合しています。
そのため途切れることなく原子同士が連なります。
すると分子と呼ぶための数える単位が無くなり、分子ではなくなるという仕組みです。

分子が性質の最小単位であることはよく知られています。
また具体例もよく知られており、本文中では水を使っていましたが他にも二酸化炭素,窒素,アンモニア,ベンゼン,メタン…と考えれば枚挙にいとまがありません。
しかし分子は数える単位をもっているという事実(定義)を意識したことがある人はどれ程いるでしょうか?
これが今回のテーマが「分子を定義しよう」になっていた訳です。
でもこの記事を読んだ皆さんはもう大丈夫です、分子が定義できます!

さて、今まで「数えられる」という言葉をずっと使ってきましたが、いざ分子を数えるとなるとどう数えるのでしょうか?
単位は何でしょうか?
原子は非常に小さいですから、一々”個”で数えていては信じられないほど大きな数字になってしまいます。
ここで登場するのが”mol“です。そのまま”モル”と読みます。
molとはダースのようなもので、個のすごい版です。
1ダースというだけで12個の意味になるように、1molというだけで大量の意味になります。
では具体的に1molは何個でしょうか?
これはアボガドロ定数という値によって定義されています。
アボガドロ定数はなんと…

6.02214076*10^23

です!
パッと見大きすぎて意味が分からないですね。
元々は観測値を使っていましたが、2019年5月に定義値となりました。
よって1molと言ったら厳密にこの量です。
しかしそんな細かい値は気にしないで大丈夫です。
重要なのは10の23乗だということです。
ダースは12個集まって1ですが、molは10の23乗個集まらないと1になれない…。
途方もないですね。
ですがこの値は実は妥当な大きさで、最も軽い原子である水素原子が1mol集まると1gになります
つまり、日常的に見かける大きさの値にするためにはこれだけ膨大な数の元素が集まる必要があるということです。


如何でしたか?
分子の定義とその数え方が分かっていただけたと思います。
分子は数えられる単位を持っており、物質の何でもが分子という訳ではありません。
また数える時にはmolという単位を使っており、膨大な数を集めないと1として数えられません。
化学らしい厄介な話になってきましたが、大丈夫でしょうか。

次回以降も化学アレルギーに関係なく読んでいただけたら幸いです。
では、終わります。

今回のまとめ

  1. 分子は物質の性質の最小単位である
  2. 物質を細かく見た時に必ず分子がある訳ではなく、数えられる単位を持つもののみが分子である
  3. 分子や原子を数える時はmolという単位を用いる
  4. molという単位はアボガドロ数という膨大な数をもって定義されている

かりふぉるにあ
パッと見テキトーに見える記事ですが、本当にテキトーです。基本的に口語調です。割と何でも書きますが、趣味の範囲は数理科学とエンタメとアイドルあたりです。毎週月曜更新「かりふぉるにあからの挑戦状」毎週土曜更新「化学アレルギーへの処方箋」

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