ある日の深夜。私は何の気なしにYouTubeを開いた。そろそろ眠りにつきたい時間だったのでがっつり動画視聴をするよりもゆったりとしたテンポの曲を聴きたくなり、このMVを視聴した。
マカロニえんぴつの『ブルーベリーナイツ』。失恋ソングだ。しっとりとした曲調の中を空虚さが漂うのが不思議と心地よい。ふわふわとした感覚に襲われて寝ぼけ半分になった
私はアプリを落とすのではなく、なぜかホームタブに戻っていた。
この動画がおすすめされていた。
SixTONESの『Strawberry Breakfast』。こんな時間にBreakfastだなんて勧めてこないでくれと思いながらも、Breakfastという単語に少しだけ眠りから遠ざけられていた自分がいた。中途半端に覚醒している状態にあると、得てして人間は奇妙なことに着目してしまう。
『ブルーベリーナイツ』と『Strawberry Breakfast』って対義語では???
気が付くと私は『Strawberry Breakfast』のMVを再生していた。深夜は人を狂わせる。何回か見たことのあるはずなのに、顔のいい人間がことごとく振られる様がおもしろくて仕方がなかった。歌詞はブルーベリーナイツとは対照的に幸せそのもの。キラキラを過剰摂取したところで本格的に目が冴えてきてしまった。
こうなったらもう一度と、私は『ブルーベリーナイツ』のMVを再生していた。改めてしっかりと観賞したことでこのMVの構成の「しんどさ」に気づくことができた。登場する3人はおそらく、主人公(演:はっとりさん;マカロニえんぴつのボーカル)、主人公の元カノ、主人公の元カノの現在の彼氏だと思う。映像では3人で寝泊まりをしているが、個人的にこの映像は実際にこの3人がやっていることというより主人公の頭の中を具現化したものだと感じた。主人公は彼女の心が自分からどんどん離れてほかの人間のところに行ってしまっていることを理解できている。その切なさや苦しみをMVの中で視覚的に表すことで直接的に視聴者に届くようになっていると思う。
もちろん歌詞もかなり苦しいものとなっている。1から10まで苦しい歌詞となっていて、変に抜き出すと上手く伝わらないと思うので、とりあえず歌詞にも注目しながらMVを見てみてほしい。といいつつも特に個人的にしんどいと感じたところを挙げてみる。1サビでは、
運命の誰か あたしを掬って食べて
と歌っている。運命というワードが来たらそれに続くのは大概「人」や「相手」なのに、「誰か」とはなかなかに他人事だ。ところが、2サビともなるとこんなものではない。
誰でもいいよ あたしを潰して舐めて
誰でもいいよ…そんな…そんなこと言うなって。いやいや自暴自棄が過ぎませんか??き、きつすぎる……ちなみにラスサビではご丁寧にも「運命の誰か」と「誰でもいいよ」の連続ジャブがご用意されている。鬼畜の仕業だ。
私は癒しを求め、あろうことか『Strawberry Breakfast』を再生していた。この人たちめっちゃ楽しそうじゃないか!君たち振られたんだよ!わかってる??顔面をバラでぶたれてた人もいたよね?ちょっとそこ、虚無顔でいもを食べるんじゃない!!!!うわうわ顔のいい人たちが近づいてきたぞ?顔面で芸術祭を開催するな!!っちょっと近い、近すぎ!?お手軽ルーブル美術館といったところか??……取り乱しました。失礼いたしました。何も伝わらなさそうな文章を錬成してしまった。兎にも角にも一発撮りで撮られたこの映像は言うなれば幸せのハッピーセット。映るものすべてがキラキラしていて多幸感が詰まっている。このスマイルが0円で……?
映像だけでなく歌詞も幸せそのものだ。ざっとかいつまむと、「君がいる」朝(日々・日常)を映画になぞらえて賛歌(謳歌)しているのだが、これもまた歌詞のすべてが幸せで、変に抜き出すと上手く伝わらないと思われるので、歌詞にも注目してMVを見てみてください、と逃げさせてほしい。
『Strawberry Breakfast』を見た私は完全に興奮してきてしまった。そして、寝るためという名目で再び『ブルーベリーナイツ』を再生する。映像だけでなく歌詞にも注目してみると韻が踏まれていたり、「冷める」と「覚める」でかかっていたりと新しい発見があった。また25時と具体的な時間に言及があることにも気づいた。
お察しの通り、私はおもしろくなってきてしまっている。こちらでも具体的な時間が歌詞にあるのか確認したいと『Strawberry Breakfast』を再生した。「四六時中 all I need is you」「24/7 Crazy about you」とのことだった。Rap詞でものろけてやがる。日を改めて歌詞を調べてみると楽曲のMVに使われていない部分にAM7:30と出てきた。やはり朝の曲だ。
切なく苦しい深夜の曲のMVと幸せの詰まった朝の曲のMVを交互に見る。これは新しい温冷交代浴のカタチなのかもしれない。温冷交代浴を通じて私は
『ブルーベリーナイツ』と『Strawberry Breakfast』って本格的に対義語では???
と思わざるを得なかった。午前3時。嗚呼、完全に覚醒しちまったじゃないか。
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