UnlimitedHandをご存知でしょうか?
今回はこの超イケてるクールなデバイスをご紹介したいと思います。
UnlimitedHandとは?
H2Lというベンチャー企業が販売している「VRを感じられる触感型ゲームコントローラー」です。同社の紹介文を引用すると「EMSテクノロジーにより”触覚を”筋肉に伝え、ユーザーが体感することができるデバイス」だそうです。「仮想の触覚を電気刺激によって擬似的に体感ができる」ようするに「腕に巻くと、あたかも手に銃を握っていたり、鳥が留まっている感じがする」装置です。
文章だけでピンと来る方は少ないと思います。ぜひ下の動画をご覧ください。
いかがでしょうか?なんとなく、どんな代物かご理解いただけたと思います。
※以降UnlimitedHandをUHと表記します
仕組みについて
このデバイスの仕組みについて触れていきます。
EMSテクノロジーとは
先ほど説明の中にEMSテクノロジーというワードが登場しました。まずは、これがなんなのかを簡単に説明します。
EMSとは、略さずいうと[Electrical Muscle Stimulation]日本語で[電気的筋肉刺激]です。中学や高校の生物の授業で「筋肉は電気によって動く」と教わると思います。ご存知の通り、生き物の身体中の筋肉は電気を受けると収縮します。
EMSテクノロジーはこの”電気によって収縮する”性質を利用して、筋肉に意図的に電気信号を送り操作するというものです。
例を挙げるとSIXPADがわかりやすいでしょうか。腕とかお腹とかに巻いたり貼っつけたりしてビクッとする効くのかどうかよくわからないアレです。体の貼り付けたところの筋肉に繰り返し電気を送って、何度も収縮させて鍛えるというのがSIXPADの仕組みです。
UHはこのSIXPADと同様にEMSテクノロジーで腕の筋肉を収縮させることでユーザーに擬似的な触覚を体感させます。
両者の違いは、SIXPADはあくまで筋肉のトレーニングとして強い刺激を、UHは感覚の再現のためにより繊細な刺激を筋肉に与えているという点です。
UHの働き
UHは埋め込まれたセンサーによって、腕の皮膚を介して電気信号を送受信、双方向に扱います。つまり、銃を握る感覚を電気信号として皮膚に伝えて来ますし、指を握る動作をすれば発生する筋電を読み取ってコンピュータに伝え、ゲーム内で銃のトリガーが引かれます。
UHを使ったセンシングによってデータを取れば、銃や鳥だけでなくバットを握る感覚、グラブでボールを捕る感覚だって再現できるはずです。(もっとリアルなWiiスポーツとかが出たら凄く面白そうですよね)
“ココ”がクールで凄いんだ
おそらくここまででUHがイケてるクールなデバイスであることは伝わっているとは思いますが、一応改めて私が凄いと思うポイントを挙げていきます。
コントローラーを握るよりリアルな触覚体験ができる
例えば野球VRゲームでは、HLを使えばわざわざ棒状コントローラーを用意しなくてもリアルにバットを持っている感覚が体験できます。HLがあたかもバットを持っているような信号を送ってくれるのですから。ジャイロセンサーと組み合わせれば、もう完璧にリアルなバッティングができるはずです。
FPSでは、近接戦闘になったときに武器を銃から刃物に切り替える場面があると思います。もしVRでプレイしていて、銃の形をしたコントローラーを握っていたら、ナイフ戦闘のときに多少なりとも違和感が生じるはずです。せっかくの没入感をそのわずかな違和感に妨げられるのはもったいない。しかし、UHのようなEMSコントローラーならばその問題はありません。”腕を2回振る”などのジェスチャーをしたら武器が切り替わり、ナイフになった瞬間に銃を持っていた感覚からナイフの操作感に変わるといった一連の動作も可能になるはずです。
※追記(2020/1/8)
VRゲームのレビューサイトをざっと眺めてみると、リアルな銃に近い操作感を追求したVRゲームはあまりに操作が複雑すぎて難しいという意見がありました。現実に寄せるところは寄せる、面倒な部分は簡略化するといったバランスがVRゲームには求められるようです。
情報量・臨場感の拡大
VRをより現実に近づけるための課題として、嗅覚と触覚が長年研究されていました。UHはそのうちの1つ触覚のソリューションになります。この課題が解決されたことによって、起こるのは”情報量の圧倒的な増加”です。
人は「温度」と「感触」など2種類以上の情報を受け取るとそれを強く知覚します。認知科学のモダリティという概念です。すなわち、知覚は情報の掛け算によって強まるということです。情報の種類が増えれば増えるほど指数関数的に人が受ける情報量は増えるわけです。
そして、情報量が増えるとどうなるのか。臨場感が生まれます。
臨場感は”周囲の環境から与えられる情報量が人の受けられる情報の許容量を超えた時に生じる“と言われます。
よく、音楽ライブなどで臨場感が凄いと感じるのは音や光など様々な刺激があり、情報量が圧倒的に多いからです。オンラインライブがやはりオフラインに劣ると言われる原因の1つがこの情報量による臨場感の差と言われています。ライブハウスでの圧倒的な情報量に対して、自宅のリビングで受け取る映像と音声による情報は限られているからです。
従来のVRゲーム、PSVRやOculus Riftは映像と音声から成り立っています。2次の情報しかなかったころに触覚が加われば、VRゲーム内の情報量は爆発的に増えるはずです。臨場感が生まれ、もっと没入できるようになるのではないでしょうか。
一度VRゲームを体験した人には共感していただける思うのですが、今の映像と音だけのVRゲームも結構な没入感を感じることができます。その没入感がもっと増したらどうなるでしょう?もうバイオみたいなホラーゲームはめっちゃくちゃに怖いと思います。FPSだって撃たれたらその刺激を受けるわけで、さながら戦場にいる感覚を味わうことができると思います。ULにはVRゲームの面白さを無限に拡大してくれる可能性があると密かに期待しています。
SAOやマトリックスのようなフルダイブ型VRマシンの実現は、現在の技術ではまだ難しいと言われています。脳とコンピュータを相互的に接続することが倫理的に怪しい、脳波を読み取ることはできても適切な刺激を送る術がまだ確立されていないなどが理由としてあげられます。
しかし、脳と直接やりとりすることが難しくても、フルダイブに近いものを実現はそう難しくないと思います。ゲーム内の信号を体に出力するにはEMSテクノロジーを、人からゲームへの入力はEMSテクノロジーとブレインマシンインターフェースによる脳波の読み取りの併用で実現できると思います。スティーブン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』を見ていただくと、イメージが伝わると思います。
容易に購入することができる
結構凄い技術を一般人が触れられるように安価に提供してくれているのが凄い。このUnlimitedHandは米TIME誌の「Best 50 Inventions 2011」に選ばれた同H2L「PossessedHand」の技術を個人が使えるものに開発し直されたものです。EMSデバイスを扱おうとしたら環境構築になかなかのコストがかかる所、敷居が低く簡単安価に誰でも購入できるのも地味ですがポイント高いと思います。
おわりに
このUnlimitedHandを開発、販売しているベンチャー企業のH2Lの創業者、玉城絵美さんは早稲田大学の准教授です。ご自身が高校生のときに病気で入院した時に、お祭りなどのイベントを映像と音声でしか体験できなくて辛いと感じ、それ体験が研究のきっかけとなっているそうです。H2Lから出ている最先端デバイスにはまだまだ面白いものが沢山あるので、今後記事にして紹介したいなと思います。
私はVR技術がいつか空間という制約を盛大に破壊してくれると信じています。家から出られない、病院にいなきゃいけない辛い時でも、自由に友達と遊べるセカイが実現されるとといいななんて思います。
いかがでしたでしょうか。
もし興味が沸いた方は公式ページにアクセス、購入を検討してみて下さい。
(研究資金が増えてどんどん面白いデバイスがでるといいなぁ)
以上、ジローがお届けしました。