化学アレルギーへの処方箋#10 酸とアルカリと塩基

連載第10回です。

前回は化学反応とは何か紹介しました。
気になる方は化学アレルギーへの処方箋#9 化学反応の1歩目をご覧ください。
今回は酸,アルカリ,塩基とは何かについて説明しながらそれらの化学反応を見ていきます。

始める前に、化学アレルギーへの処方箋#1 化学とは?で説明した、この連載におけるアンダーマーカーの使い方を確認しておきます。
青アンダーマーカーが引いてある部分は重要な内容です。ここだけでも理解していただけたらと思います。
赤アンダーマーカーが引いてある部分はプラスαの内容です。化学アレルギーの方は飛ばしてもらって大丈夫です。

では早速始めていきましょう。
第10回のテーマはこちらです。

酸塩基の化学反応とは?

酸,アルカリ,塩基を説明していきます。
頑張っていきましょう!


小学生の頃はよく「酸」と「アルカリ」という言葉を使っていたと思います。
しかし中学生になると「酸」と「塩基」になったんじゃないでしょうか。
ここにはちょっとした理由がありますが、そこは後で触れます。
一旦「塩基」で統一して説明していきます。

まず具体的にどんなものが「酸」なのか考えましょう。
理科の授業だと塩酸,硫酸,酢酸などが出てくるでしょう。
他にも化学をやっていると硝酸,安息香酸,ベンゼンスルホン酸など無数の酸を扱います。
では何をもって酸を酸と呼んでいるんでしょうか。
当然そこには”定義”があるはずです。

酸の定義はいくつかあります。
それぞれ使う場面が異なりますが、ここでは有名なものを3つ紹介します。
(ただし3つ目は難しく使う機会も限られるため赤アンダーマーカーです)

1.アレニウスの定義
酸:水溶液中で水素イオンを放出する物質
塩基:水溶液中で水酸化物イオンを放出する物質

2.ブレンステッド・ローリーの定義
酸:反応する相手に対して水素イオンを与える物質
塩基:反応する相手から水素イオンを受け取る物質

3.ルイスの定義
酸:反応する相手から電子対を受け取る物質
塩基:反応する相手に対して電子対を与える物質

この説明で分かるでしょうか。
最も有名なものは1番のアレニウスの定義です。
例えば塩酸はHClという化学式で書かれますが、これは水素イオン(H^+)を放出します。
また塩基として有名な水酸化ナトリウムはNaOHという化学式で書かれ、これは水酸化物イオン(OH^-)を放出します。
普段使う定義としてはこれで十分です。
しかしこれだと「酸,塩基らしい性質を示すのに定義を満たさない物質」が生まれてしまいます。
最も有名なものはアンモニアです。
この化学式はNH_3ですが、見たら分かる通りOH^-を放出できません。
そこで使うのがブレンステッド・ローリーの定義です。
アンモニアは水から水素イオンを受け取ります。
すると水は水酸化物イオンになるため塩基らしい性質を示します。

ブレンステッド・ローリーの定義にも問題はあります。
それは水が酸にも塩基にもなるところです。
アンモニアの例を考えると水は水素イオンを放出しているため酸です。
しかし塩酸などが水溶液中に入ると水素イオンを放出し、これは水と結合してオキソニウムイオン(正確にはヒドロニウムイオン)を生成します。
この例では水は塩基です。
つまり、ブレンステッド・ローリーの定義も完璧ではありません。

では完璧な酸塩基の定義とは何でしょうか?
実はこの問いの答えは「無い」です。
酸塩基は昔から慣習的にそう呼んでいただけであるため、理論で完全にカバーできるものではないんですね。
これは化学の原点は実験と観察であって理論ではないことに由来しています。
(逆に数学は理論から始まっている学問ですね。対照的です。)

さて今更ですがアルカリと塩基の違いについて一応説明しておきます。
アルカリは塩基の一部と考えられます。
アルカリは塩基の中でも特に水に溶けるもののことを指します。
しかし「水に溶けないけど塩基らしい性質を示す物質」は存在するためアルカリという言葉では不十分だと言えます。
そのため中学以降は原則として”塩基”という言葉を使います。

最後に酸塩基の化学反応について扱います。
これまで「塩基らしい性質」という曖昧な表現を使っていましたが、ここをハッキリさせましょう。
酸と塩基は中和という反応をします
これは酸と塩基がそれぞれ持つ(アンモニアなどの場合は間接的に生成する)水素イオンと水酸化物イオンが結合して水を生成する反応です。
酸と塩基に独特な反応で、逆に酸と塩基ならこの反応をします。
つまり今まで「塩基らしい性質」と呼んでいたのは「酸と反応して水を生成する実験事実がある」ということです。
具体的な反応を見てみると以下のような感じです。

水を生成しながら余ったイオン同士が結合していますね。
化学反応式の書き方は前回説明した通りです。
左右の物質の数が等しくなっていることが分かると思います。
酸も塩基も物質によっては危ないです。
塩酸や水酸化ナトリウムは触れると触れた部分が溶けてしまいます。
しかし中和して出来た物質(NaCl)は安全です。
酸と塩基が中和して生成する物質は基本的に安全です。
そのため中和反応は酸と塩基の激しい性質を無くしてくれるわけですね。
これは普段日常生活で使う”中和”と同じだと思います。


如何でしたか?
酸と塩基の定義、塩基とアルカリの違い、中和反応について一通り分かっていただけたんじゃないでしょうか。
多くの種類の酸と塩基の中和反応を考えますが、どれも本質は水素イオンと水酸化物イオンが結合して水になることです。
あとは残り物が結合しているだけと考えると化学が俯瞰的に見えてくると思います。

次回以降も化学アレルギーに関係なく読んでいただけたら幸いです。
では、終わります。

今回のまとめ

  1. 酸と塩基はいくつかの方法で定義されている
  2. どの定義も完璧ではなく、酸と塩基はあくまで古くからの慣習的なものである
  3. 酸と塩基は中和反応を起こし水を生成する

かりふぉるにあ
パッと見テキトーに見える記事ですが、本当にテキトーです。基本的に口語調です。割と何でも書きますが、趣味の範囲は数理科学とエンタメとアイドルあたりです。毎週月曜更新「かりふぉるにあからの挑戦状」毎週土曜更新「化学アレルギーへの処方箋」

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