「自由律俳句を楽しむ会」 第1回結果発表

概要

自由律俳句を楽しむ会第1回の結果発表です。
自由律俳句を楽しむ会について、また第1回の概要についてはこちらをご覧ください

ちなみに、今回のお題は「春」でした。

結果発表

順不同です。順位はつけていません。

やわらかな光りに踊るカーテン
(おのぎのあ さん 29歳)

春は新しい生活が始まり、不安と期待の気持ちが入り混じる時期だ。そんな中、あたたかな春の日差しに揺れるカーテンを見て、どこか落ち着く自分がいる。自分が何かに包み込まれるような感覚になる。「踊る」という表現も素敵だ。「揺れる」のではなく「踊る」。
春が奏でる穏やかなリズムに、ただ身を任せて生きていきたい。そんなことを思わせてくれた句だ。

踏みつけた蟻の命を悔いて春の陽
(柳泉洞 さん 32歳)

春の穏やかさに浮かれていて、蟻を踏みつけてしまったのだろうか。
人間は生きていく間に何匹もの生物を殺していく。しかし、人間はそれらの生物の命を奪う資格があるのだろうか。僕の好きな作家である伊坂幸太郎さんが、小説の中でそんなことを書いていたのを思い出した。
だからといって、ヴィーガンになるほどの決意はないのだが、「いただきます」「ごちそうさま」の質量は大きくしていきたい。
先ほどの句とは一変して、ハッとさせられる句だ。

・桜の便りにも地方の壁か
(しろとも さん)

桜の便りにおいても、地方は都会より遅れているということなのだろうか。だとしたら、この作者は北のほうに住んでいるのだろうか。
作者の意図が汲み取れない僕は、都会生まれである。上京するという経験を味わうことは今後ないだろう。もちろん海外などに行ったら別問題だが、それはそれでまたニュアンスが変わってくる。
僕の好きなミュージシャンや作家は東京へ上京し、そこでもがき苦しむ中で様々な芸術を作ってきた。自分はそういった経験無しに何を残せるのだろうか。そもそも何か残す必要はあるのだろうか。そういったことをこの句から勝手に考えてしまった。

・ウーバーイーツで買えた春風
(尾内以太 さん 36歳)

ウーバーで買えた春風って何だろうと考えた時、真っ先に浮かんだのはウーバーでお金を稼ぎながら、夢を追いかける若者の姿だ。
玄関前に現れ、自分に運んできてくれたのは料理だけではない。その若者は、料理と一緒に春風も運んできたのだ。その姿はとても逞しくそして眩しかったであろう。冬を終え、「生命が躍動していく春」をどこかこの句から感じた。

・三角座りで慣れないビールを
(みよおぶ さん 30歳)

これは二通りの解釈ができるのではないか。
一つ目の解釈としては、何らかの宴会の場で、あまり乗り気でない自分が、三角座りになって慣れないビールを飲んでいる場面だ。顔は笑っていても、心は孤立している。僕自身も、学校の帰り道やクラス会などで幾度となくこういう経験をしてきたわけだが、ここにビールが加わるとどのような心境になるのだろう。僕はまだビールを飲める年齢ではないので分からないが、少なくともビールがない学生時代はただ時間が過ぎるのを待つしかなかった。
二つ目の解釈としては、ビールを飲みながら黄昏ている場合である。「桜」という風情の象徴を見ながら、ビールを飲む自分に対して酔っているのかもしれないし、その酔っている自分を認知し、ちょっと照れくさくなっているのもしれない。
そもそもこの三角座りでビールを飲んでいる人が自分自身でない可能性もあるのだが、それも俳句の面白いところである。

送り出すばかりの春だった
(あつし さん)

学生の自分は、春と聞くと「自分自身が新しい環境に赴くこと」を想像してしまいがちだ。しかし、この作者は僕とは違って「誰かを送り出すこと」に春を感じているのだ。確かに想像してみれば、学校の先生などにとっての春はそういうことになる。毎年誰かを送り出しているのだ。
春の新しい視点を得られた気がする。自分の未熟さだったり視野の狭さだったりに気づけた句だ。

・探してないように知り合いを探す
(ひらめきウインナー さん)

この句の肝は、「探してないように」である。ただ単に知り合いを探しているのではない。「探してないように」探しているのだ。
自分は新しい環境でやっていける。一人でも生き抜ける。そう思いたい。しかし、頭ではそう思っていても、やはり心ではどこか不安で、誰かを探してしまう。知っている顔が見えると安心するものだ。
だが結局は誰も見つけられず、寂しさだけを家に持ち帰るはめになる。

感想

今回は1回目の開催にも関わらずたくさんの方からご応募いただきました。誠にありがとうございました。募集を始めて1週間は1句も投稿されず、やっていけるか不安でしたが、こうしてたくさんの素晴らしい作品と出会えて本当に嬉しく思います。

合計で40句近い応募がある中から選び、その作品から僕が考えたことを書かせていただきました。やはり人の作品に触れると、新たな発見が生まれてきます。
春について考えを深められ、とてもいい時間を過ごさせていただきました。

僕の文章を読んで少しでも楽しんでいただけら幸いです。
今後とも第2回、第3回と続けていくのでよろしくお願いいたします。

次回の開催について

次回は「自由律俳句を楽しむ会第2回」となるわけですが、お題は「寂しさ」です。
滑稽味を感じるものでも、しみじみするものでも、何でも構いません。
匿名での応募も可能なので、どなたでも遠慮なく応募なさってください。
応募フォームはまた別の機会に掲載させていただくので、僕のアカウントのチェックをよろしくお願いいたします。

また、僕自身の認知が広まっていったらエッセイの募集も開始しようと思っております(エッセイは自由律俳句と違って、投稿数が少なくなるからです)。
400文字以内のものを募集する予定ですが、お題は作らないので、エッセイを書く方は応募してみてください。募集する際はまた発表いたします。

荒川
荒川です。大学生です。自由律俳句とエッセイを募集し、恐縮ながら感想・講評を書かせていただいています。

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