化学アレルギーへの処方箋#5 原子の種類が大活躍

連載第5回です。

前回は原子の構造を扱いました。
気になる方は化学アレルギーへの処方箋#4 原子はどう出来ている?をご覧ください。
今回は前回おまけ的な存在だと紹介した中性子が活躍します。

始める前に、化学アレルギーへの処方箋#1 化学とは?で説明した、この連載におけるアンダーマーカーの使い方を確認しておきます。
青アンダーマーカーが引いてある部分は重要な内容です。ここだけでも理解していただけたらと思います。
赤アンダーマーカーが引いてある部分はプラスαの内容です。化学アレルギーの方は飛ばしてもらって大丈夫です。

では早速始めていきましょう。
第5回のテーマはこちらです。

原子の種類って何?

今回は実生活に関わってくる話が登場します。
頑張っていきましょう!


さて、一言で前回の内容を確認しますと
原子は陽子,電子,中性子の3つで出来ている!
ということでした。

今回は特に中性子に注目していきます。
前回もチラッと書きましたが、中性子は原子の種類を決定しています。
原子の種類のイメージは以下の通りです。

世界の料理はクロワッサン,醤油ラーメン,鉄火巻き,ナポリタンなどで構成されています。これが原子にあたります。
そして、元素とは原子の種類ですから、パン,ラーメン,寿司,スパゲッティなどのことです。

化学アレルギーへの処方箋#3 世界を作るものとは

つまり、中性子がパンの中でもクロワッサンなのかメロンパンなのかコッペパンなのかを決定しているということです。

陽子,電子の数は元素によって固有で出席番号のようなものですが、中性子の数は同じ元素であっても幾つもの可能性があります。
同じ元素(=同じ出席番号)でも中性子が違う(=違う原子)の関係を同位体と呼びます。
先ほどの例で言うと、クロワッサン,メロンパン,コッペパンが同位体の関係にあるということです。

と言っても同位体同士で違うところは中性子の数だけですから、基本的に性質は似ています
(ラーメンとパンの味の違いに比べたらクロワッサンとコッペパンの味の違いは小さいですよね)
また、多くの元素では同位体のうちのいずれかが大きいです。
これは料理の例だと分かりにくいですが、それぞれのメニューについて”王道”があると思っていただくのが良いと思います。
そのため、普段同位体の違いを気にすることがあまりありません

しかし、同位体は実生活で活躍しています
以下ではその例を見ていきましょう。

1.産地の同定
同位体の量の比は地域によって異なります。
そのため、その地域で飲んだ水,食べた食べ物によって体内の同位体の量の比も地域に依存してきます。
これを応用したのが産地の同定です。
すなわち、産地不明の牛肉が存在した時に、その同位体の量の比を調べてどの地域と一致するか調べることで、その産地を判断できるということです。
(どれだけクロワッサンを食べてコッペパンを食べたか調べるということですね。すごい!)
これは実際に使われている方法です。
また実際に同位体の量をプロットしたグラフが以下になります。

日本食品科学工学会誌 第55巻 第4号 「安定同位体比解析による国産・豪州産・米国産牛肉の産地判別の可能性」 図1

産地別に顕著に偏っているのが分かると思います。
このグラフでは2種類の元素(酸素と炭素です)の同位体の量の比を調べています。

2.年代の測定
同位体によっては時間経過で無くなっていく(本当は変化しています)ものが存在します。
これも想像するのは難しいですが、腐ることを考えると理解しやすいと思います。

「この化石は○○万年前に発見されました」というような展示を博物館で見たことがあるんじゃないでしょうか。
しかし、それはどのように判断しているのでしょうか?
そこで活躍するのが同位体の中でも無くなっていくものです。

同位体が無くなっていくペースは分かっています。
一定時間ごとに半分になっていき、この時間を半減期と呼びます。
半減期は原子により異なりますが、逆に言えば原子により固有です。
グラフは1/{2^x}の形を描きます。

言い換えればそれは腐っていくペースが分かっているということです。
ですから、残っている同位体の量(=腐ってない量)を調べればどれだけの時間が経過したか予測することが出来ます
これは地球の歴史を研究する地球科学において欠かせない道具となっています。

さて、2つの例を紹介しました。
実際に産地の同定や年代測定を行う機会はないかもしれませんが、日常生活で目にする,耳にするものに化学が使われていることが分かっていただけたんじゃないでしょうか。
原子が、同位体が、大活躍していましたね。


如何でしたか?
学校でやる化学ではあまり実用例が登場しませんが、実用例を見る方が化学の偉大さを感じやすいと思いますので、今後も化学アレルギーへの処方箋では積極的に取り入れていこうと思います。
「原子が~」「陽子が~」とだけ言われても「見えないし意味わからない!」ってなりますもんね。
ありきたりな解説をするだけにしたくないと思っているので、このようなエピソードで少しでも楽しんでいただけら嬉しいです。
次回も少し実生活に近い話を、と思いまして放射線について簡単にご紹介します。
(なんとこれまでの内容だけで放射線が理解できます…!)

次回以降も化学アレルギーに関係なく読んでいただけたら幸いです。
では、終わります。

今回のまとめ

  1. 同じ元素でも中性子の数が違うものを同位体と呼ぶ
  2. 同位体の性質は基本的に似ている
  3. 同位体は身近な分析において活躍している
かりふぉるにあ
パッと見テキトーに見える記事ですが、本当にテキトーです。基本的に口語調です。割と何でも書きますが、趣味の範囲は数理科学とエンタメとアイドルあたりです。毎週月曜更新「かりふぉるにあからの挑戦状」毎週土曜更新「化学アレルギーへの処方箋」

コメント

タイトルとURLをコピーしました