化学アレルギーへの処方箋#6 放射線を理解しよう

連載第6回です。

前回は同位体というものが登場しました。
気になる方は化学アレルギーへの処方箋#5 原子の種類が大活躍をご覧ください。
今回は前回チラッと登場した話を起点に身近な話を展開していきます。

始める前に、化学アレルギーへの処方箋#1 化学とは?で説明した、この連載におけるアンダーマーカーの使い方を確認しておきます。
青アンダーマーカーが引いてある部分は重要な内容です。ここだけでも理解していただけたらと思います。
赤アンダーマーカーが引いてある部分はプラスαの内容です。化学アレルギーの方は飛ばしてもらって大丈夫です。

では早速始めていきましょう。
第6回のテーマはこちらです。

放射線って何?

放射線という言葉は皆さん聞いたことがあると思います。
頑張っていきましょう!


さて、前回は同位体をご紹介しました。
同位体とは同じ元素(=同じ出席番号)でも中性子の数が違う原子のことでした。
前回はさらにその同位体が実生活のどのような場面で活用されているかご紹介しましたが、その2つ目の例のところでしれっとこんなことを言っています。(この場面だけが重要なので、前回記事を読んでいただかなくても話は理解できます。でも読んでいただけると僕が喜びます)

同位体によっては時間経過で無くなっていく(本当は変化しています)ものが存在します。
これも想像するのは難しいですが、腐ることを考えると理解しやすいと思います。

化学アレルギーへの処方箋#5 原子の種類が大活躍

詳しく触れずにそういうものだとして話を進めましたが、よく考えると意味が分からないですよね。
突然物質が変化すると言ってるんです。
今回はこの原理から始めていきましょう。

突然変化する同位体のことを特に放射性同位体と呼んでいます。
放射性同位体はエネルギー的に不安定だから変化すると説明されます。
どういう意味でしょうか?
不安定だから変わる、これはジェンガなどをイメージしていただければ同じことです。
ジェンガは木片を抜いていくと段々不安定になっていき、いつか崩れますよね。
この”崩れる”は、より安定な状態に変化する、と言い換えることが出来ます。
放射性同位体も同じことです。
エネルギーが高いために不安定であるため、もっと安定な状態に変化するのです。

この話がどう放射線の話に関わってくるのでしょうか?
そのヒントは”変化中”にあります。
放射性同位体が安定な状態に変化する時に放射線は放出されます。
(この過程以外で放出される放射線も当然あります。)

主な経路を2つご紹介します。

1.α崩壊
1つ目の経路はα崩壊(α壊変とも呼ばれます)です。
α崩壊では陽子と中性子2つずつのセットを放出します
陽子2つ、つまり原子番号(=出席番号)が2番の元素はヘリウムと呼ばれますから、これはヘリウムの原子核にあたります。(原子核は陽子と中性子の集合体のことです)
このヘリウム原子核が高速で飛び出すレーザーのようなものをα線と呼ぶため、α崩壊と命名されています。

文部科学省 高校生のための放射線副読本より

α線は原子の構造を発見する際に利用されました。
α線レーザーを金箔に照射したところ、ごく一部のみ反射しました。
このことから原子は中心部にα線と似たような構造(=原子核)を持つのではないか、と考えられるきっかけになりました。

2.β崩壊
2つ目の経路はβ崩壊(β壊変とも呼ばれます)です。
β崩壊では電子を1つだけ放出します

文部科学省 高校生のための放射線副読本より

α線もβ線もX線などの仲間です。
X線といえば病院などで聞いたことがあるのではないでしょうか。
β線はX線と同様に医療で使われ、がんの放射線治療で使われることもあります。
(α線の利用は研究中です)

さて、2つの経路の紹介と同時に図を示しました。
こちらは文部科学省の高校生のための放射線副読本より拝借しました。
2つの図にある元素記号を見て何か思った方もいるんじゃないでしょうか?
実はα崩壊,β崩壊はどちらもそれが起こるとその元素が変化します
もっと簡単に言えば、出席番号が変わります。

日本が初めて命名権を獲得した”ニホニウム”という元素がありますが、これも不安定なためα崩壊を繰り返して安定な形を目指すことが知られています。
当然崩壊した後はもうニホニウムではないということですね。

https://history.jastin.net/secbmjedgilv/ より

如何でしたか?
α線,β線がよく耳にする”放射線”の正体(のうちの1つ)でした。
ここまでの化学だけでも身近なものが潜んでいるということを感じていただけたら嬉しいです。
若干難しい回になってしまいました。大変だった方はすみません。
次回以降はまた化学の勉強らしい話題に戻ります。
単純な勉強は退屈に感じるかもしれませんがシンプルです。
このような応用編の話とうまくバランスを取って書いていきたいですね。

次回以降も化学アレルギーに関係なく読んでいただけたら幸いです。
では、終わります。

今回のまとめ

  1. 同位体の中でも特に突然変化するものを放射性同位体と呼ぶ
  2. 不安定だから安定になるために変化する
  3. 変化の方法は2つあり、ヘリウム原子核を出すα崩壊と電子を出すβ崩壊である
かりふぉるにあ
パッと見テキトーに見える記事ですが、本当にテキトーです。基本的に口語調です。割と何でも書きますが、趣味の範囲は数理科学とエンタメとアイドルあたりです。毎週月曜更新「かりふぉるにあからの挑戦状」毎週土曜更新「化学アレルギーへの処方箋」

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