ゲームの目的
ゲームを作るにあたって、その目的や表現したいことを明確にすることは、デジタルアナログを問わず、まずとるべき必要なプロセスです。『ゲームメカニクス大全』という、アナログゲームの要素を細かく解説した本の序文には、以下のようなことが書かれています。
ゲームは1つの言語である。しかし、ゲームは単なる言語ではない。
ゲームを1つの言語ととらえるなら、ゲームデザインは製作者がプレイヤーに伝えたいことが伝わり、かつプレイヤーの表現に幅を持たせられるものであるべきです。トランプゲームを例にとるならば、ババ抜きは相手プレイヤーの手札の選択、自分の手札の並べ方、相手プレイヤーの手札を「読む」点などに拡張性=各プレイヤーで取れる行動の幅があります。ゲームデザインとは、言ってしまえば拡張性を「どの程度持たせるか」という行為です。世の中に遊びつくせないほどあるゲームを差別化しているのは、当然「ルール」なわけですが、この「ルール」という名の制限があるからこそ、その中で自分らしさを表現することに喜びが得られるわけです。
自作ゲーム「インペリオ」(仮称)の紹介
ここからは僕が作っている「インペリオ」(仮称)というゲームを例にとって、ゲームデザインについて紹介していきます。実を言えばこれが二作目となるカードゲームになります。一作目は多人数戦と「プレイヤーライフ」を存在させないという二点を根底においてデザインしたゲームでした。1.では触れませんでしたが、このように「このゲームでは〇〇を無くそう」という視点がゲームにまとまりをもたらすために重要です。
少し話がわきにそれました。二作目となるゲームでは、前作が多人数向けだったこともあって、二人対戦にこだわりたいと考えました。次に考えるべきはゲームの独自性をどこに持たせるかという点です。カードゲームを構成する要素は主に言えば「手札」「山札」「ライフ」「マナ」ですが、本作ではこのうち「マナ」の要素を無くすことに決めました。(理由の一つは、自宅で印刷するにあたり、ゲームに必要なカードの枚数が増えることを避けたかったことにあります。マナソースとなるカードを作るとなるとデッキの枚数が膨れてしまいます。本作では一デッキ15枚の山札を想定し、マナの要素を削ることでこれを実現させました。)また、遊戯王との差別化を図るためにも、「1ターン1枚のカードしか使えない」というルールも採用しました。(実を言えば、最初は騎士と騎士が正々堂々勝負するゲームを作ろうと考えていました。それが紆余曲折あって、「正々堂々」の要素が「1ターン1プレイ」に落ち着きました。)ただ、1ターンに1プレイというのは前述した「拡張性」に問題が生じる可能性のあるルールになります。これを対処するために(そして、作ろうと考えていた「騎士」の要素が制度化されて)「皇子」というカード、システムを作ることとしました。ハースストーンのヒーローパワーに近い点もあります。具体的には皇子それぞれが持つ「統率力」を加減させることで一定の効果を発動できる能力を、各ターン1回使えるというものです。これについては次回、具体的に紹介します。
以上のプロセスでゲームの根幹にあるルールが完成します。次回はゲームバランスの設定、具体的には基準となるカードの設計とルールの整備についてを扱います。ではまた。