高校論文 文章の作法 第四回 段落の組み方を制する

 毎日更新に追われて、本来更新したいはずのこうした週刊連載に時間を割けないでいます。

 とはいえ、内容の質は落としたくありません。ところで、段落の作り方、皆さんはご存じですか?読むときには意識されないが、書くときに意識しないと読み手に違和感を与えてしまう。これが段落の難しさです。

 ご覧のように僕は今不自然に段落を作っています。特に近年の若い世代は、メール文化やチャット文化に慣れているがために、全く段落のない文章を書いてしまうことが多いといわれています。それはそれで不自然。では、「自然」な段落とはどのようなものなのでしょうか。

段落の意味を制する。

 なぜ段落が重要か。それは一にも二にも「読みやすくするため」です。日本語というのは本来段落の存在しない言語ですが、それでも読みやすさのためにあえて伝統を破る必要があります。

 段落と聞くと、たいていの日本人は「形式段落」と「意味段落」という言葉を思い浮かべると思います。このあたりの定義は実際にはあいまいなことが多いようですが、形式段落のほうが細かいことに間違いはありません。文章の読みやすさを考えると、より重要なのは「意味段落」でしょう。段落を切るべき具体的なポイントははっきりとはしていません。行ってしまえば「なんとなくの感覚(かつ間隔)」なのです。

 正直な話、僕自身も段落に区切るのが非常に苦手です。何も考えずに文を書いていると、あっという間に巨大な文章ブロックが完成してしまいます。ただ、僕のようなタイプの人間こそ、段落に区切ることをより注意したほうが良いのです。段落に区切ることが文の構造を再考することにつながるからです。では、どのようなタイミングで段落を区切ればよいのでしょうか。それを考える前に、一つの段落の構造について考えていきます。

段落の構造を制する。

 では、具体的な段落の構造について考えていくこととしましょう。いわゆる「国語」の授業を受けた経験のある方なら、「起承転結」や「序破急」といった言葉に耳なじみがあることでしょう。「起」-話のつかみ、背景-「承」-本題への誘導-「転」-話の展開等のメイン-「結」-結末、結果-は、日本語文章のセオリーともいわれます。しかし、「わかりやすい文章」を書くためには、このセオリーを愚直に守ってはいけません。「結起承転」である必要があるのです。

 英語の授業で「トピックセンテンス」なるものを学んだことのある方が多いと思います。トピックセンテンスはパラグラフの中で最も重要な、要旨の整理された文です。言い換えてみれば「結論」にあたるパートでもあります。段落を考える際には、言いたいことは一つに絞り、重要なことだけを抽出した文を作り上げ、段落の最初に配置しましょう。一つの段落にはこうした「トピックセンテンス」を一つだけ盛り込むということが重要です。なお、段落の最後に再びトピックセンテンスを配置することは、その段落における意図の強調につながります。

 これが書ければ残りの「起承転」を書くまでです。この際に、あまりに一つの段落が長い場合には、それぞれのパートごとに形式段落を設けてあげると良いでしょう。

 とはいっても、「起承転」を書くにも相応のハードルがあります。トピックセンテンスがいかに優れていようと、説得力が伴わなければ意味がありません。説得力をうまく付すことができる文こそ、優秀な「起承転」にあたるものでしょう。具体的には、「具体例の明示」「比較」「論証」などがそれにあたるでしょう。とにかく「トピックセンテンス」に重きを置いて、段落の主題に着目することが重要です。すると、おのずと必要な論理や比較、具体例が浮かび上がってきます。

 最後に、繰り返しになりますが、一つの段落でいいたいことは一つに絞ることが重要です。そのうえで、段落の要旨を「トピックセンテンス」にまとめあげ、段落の最初と強調したい場合には最後にも配置しましょう。

段落の区切りを制する。

 ここまで読んでいただければ、なんとなくの「段落の区切り方」が身についているかもしれません。ご推察のように、「言いたいことが変わるタイミング」こそが段落の切れ目に当たります。

 そもそも主語が変わる場合、対象とするものが変わる場合、同じ対象でも視点を変える場合、あるいは考え方が変わる場合。いろいろな事例が考えられますが、「トピックセンテンスを作り上げられるパート」が目安になります。

 ブログは極端に段落分けをすることが多く例外的ですが、レポートや論文などの文章では逆に段落分けがほとんどなされない事例をよく見かけます。(私もその一人であります。)題材の切り替わりは多くの場合章や節の切り替わりと一致しているためわかりやすいのですが、それ以外の「視点の変化」や「考え方の変化」は案外見落としてしまいやすいものです。何度も繰り返していますが、「段落でいいたいことは一つに絞る」ことが大変重要です。

制覇鍛錬~練習問題~

問.次の文章を段落に区切りなさい。

昨今では若者のテレビ離れが指摘されている。その原因として考えられるのは「YouTubeやSNS等ネットの普及」と「Netflix等のサブスクリプション制動画サービスの拡大」の二点だ。前者については、ネットの普及に伴って誰もが情報を発信できるようになったことが大きい。これにより、世の中にあふれる情報が溢れる時代となり、今までのマスメディアが得られないような情報が簡単に入手できるようになった。テレビまでもがネット出身の情報を扱うこともあり、いかにネット出身の情報に価値があるかがわかる。後者については、サブスクリプション制動画サービスの安さと手軽さが大きい。こうしたサービスは自分の見たい時に見たいものを見られる点、そしてスマホでも見られる点が非常に大きい。のわりに月額あたりの負担額はNHKの受信料と比べれば圧倒的に安く、多くの支持を集められることもうなずける。しかし、テレビも昔、ラジオが圧倒的だったメディアのシェアを奪ったことを考えてほしい。メディア媒体のパラダイムシフトはある一定周期で必ず起きるものである。しかし、ラジオは今五感のうち耳しか使わなくてよいという独自性を強みとしつつ、radiko等現代に合わせたサービスを展開することで、立場を取り戻しつつある。ならば、テレビもメディアの主力であるという立場を奪われたとしても、何かしらの形で価値を見出せるはずだ。今後のテレビ業界に必要なのは、世の中を見極め適切なサービスを展開する力である。

解答

 昨今では若者のテレビ離れが指摘されている。その原因として考えられるのは「YouTubeやSNS等ネットの普及」と「Netflix等のサブスクリプション制動画サービスの拡大」の二点だ。

 前者については、ネットの普及に伴って誰もが情報を発信できるようになったことが大きい。これにより、世の中にあふれる情報が溢れる時代となり、今までのマスメディアが得られないような情報が簡単に入手できるようになった。テレビまでもがネット出身の情報を扱うこともあり、いかにネット出身の情報に価値があるかがわかる。

 後者については、サブスクリプション制動画サービスの安さと手軽さが大きい。こうしたサービスは自分の見たい時に見たいものを見られる点、そしてスマホでも見られる点が非常に大きい。のわりに月額あたりの負担額はNHKの受信料と比べれば圧倒的に安く、多くの支持を集められることもうなずける。

 しかし、テレビも昔、ラジオが圧倒的だったメディアのシェアを奪ったことを考えてほしい。メディア媒体のパラダイムシフトはある一定周期で必ず起きるものである。【形式段落を入れてもよいでしょう】ラジオの例を挙げよう。ラジオは今、今五感のうち耳しか使わなくてよいという独自性を強みとしつつ、radiko等現代に合わせたサービスを展開することで、立場を取り戻しつつある。【形式段落を入れてもよいでしょう】ならば、テレビもメディアの主力であるという立場を奪われたとしても、何かしらの形で価値を見出せるはずだ。今後のテレビ業界に必要なのは、世の中を見極め適切なサービスを展開する力である。

貫通錯誤
カードゲームとボードゲーム(ゴールデンエッグラー,mtg,シャドバ,Blade Rondo,自作など)を嗜んでいます。カードゲーム、音楽、動画についてなどと、根強いファンを誇りたいショートエッセーの現代錯誤という連載を書いていきます。
noteでも(ほぼ同じ内容を)公開しています。⇒https://note.com/sakugo_suzuko

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